学生のみなさん、ついにやってきましたね! 待ちに待った夏休み!
社会人のみなさんにとっては普段どおりの日々が続きますが、それでも夏らしい気分は味わいたいもの。読書感想文を書いていたあの頃を思い返しながら、ちょっとここらで読書でも。
今回は夏休みにおすすめの本をご紹介します。わたしの主観ソースではありますが、読書感想文の書きやすさも併記しているので、参考にしてみてください!
(★★★★★が超おすすめ!)
Contents
夏の読書|おすすめの本
梨木香歩|西の魔女が死んだ
以前、このブログでもご紹介した一冊。
「生きづらいタイプの子」である主人公のまいは、ある日を境に学校へ行くことができなくなり、西の魔女こと祖母の家で暮らすことに。
自然豊かな西の魔女の家でゆったりと暮らす中で、まいは「自分」と向き合ってゆきます。
人と関わることに少し疲れ気味だなあ……という人ほど、まいに共感しやすいのもポイント。
「自分は自分でいい」という視点を大切に。周りと違う価値観を「個性」と捉えて誇りを持つこと、一つ一つの命や物事には意味があることといった視点からまいの気持ちになって読み進めるのがおすすめ。
【読書感想文おすすめ度】
★★★★★
日頃の学校生活が反映しやすいストーリーです。
主人公のまいに自分を反映することで、自分を見つめ直すこともできるよ!
遠藤周作|海と毒薬
舞台は太平洋戦争中の日本。医師である勝呂の視点から、医学分野における禁忌である「人体実験」を軸としたストーリーと周囲の人間との確執が描かれます。
「あれは殺したんやないで。生かしたんや」
倫理観すら歪む終戦間際。
この時代に生まれていたら、同じ立場に立たされていたら、果たして自分は声を大にして「こんな実験間違ってる」と言えたでしょうか。そして、戸田医師の行動は、言葉は、本心からのものでしょうか。
最後にもう一つ。
この小説は架空の物語ではなく、太平洋戦争中に実際に起きた事件――捕虜となった米兵が臨床実験の被験者として使用された事件(九州大学生体解剖事件)を題材としています。
さほど長い小説ではないですが、とにかく濃厚。
終戦記念日にむけてゆっくりと読み進めるのがおすすめです。
【読書感想文おすすめ度】
★★★★☆
ちょっと前話題になった技術・研究分野での不正問題と絡めやすいテーマ。
ただし重めのテーマであり、考察を要するので高校生以上向けかも?
村上春樹|神の子どもたちはみな踊る
阪神・淡路大震災の後の世界を描いた短編集。
謎の小箱を抱えて釧路に向かった男性。地震を起こすみみずくんと戦うかえるくん。流木が燃える冬の海岸などなど、とにかく様々なテイストの短編が6つ収められているのですが、この本を読む中で注目してほしいのがそれぞれの登場人物の震災(あるいは個々が抱える問題)との向き合い方。
冒頭の短編から話数を重ねるにつれ、明らかに登場人物たちは自ら向き合い行動する傾向が強くなります。
大きな地震が発生することも多くなり、さらに豪雨など異常気象も頻発するようになった今日このごろ。
「神の子どもたちはみな踊る」は、災害と人との関わりについて考える良いきっかけになるはずです。
【読書感想文おすすめ度】
★★★☆☆
自然災害が多発するいま、テーマの一致度は◎。
主人公がそれぞれ違う短編集なので、一人に絞った感想が書きづらいのが欠点。
小川未明|小川未明童話集
小川未明と聞いてピンとこないあなたも、「赤いろうそくと人魚」なら知っているかも。
小川未明さんは、新潟県出身の児童文学作家。ここでご紹介する一冊には「赤いろうそくと人魚」いくつかの童話が収められているのですが、童話と思って侮るなかれ。
小学生、中学生の読書感想文の課題図書としてはもちろん、高等学校以上の皆さん、文学を学ぶ大学生の方々の課題にも使えるような深い作品が多いのです。
どれも珠玉の逸品ばかりですが、読書感想文という視点で言うなら「野ばら」か「眠い町」がダントツでおすすめ。
物語の主人公は、国境の石碑を守る二人の兵士。片方は老いており、もう片方は青年です。
二人はとても仲がよく、穏やかな毎日を送っていたのですが、ある日を境に、二人の国は敵同士となります。
――そう、戦争がはじまったのです。
「こんなに老いても少佐だから、わたしの首を持っていけば出世ができる。どうか殺してください」と申し出る老人に対し、「どうしてわたしとあなたが敵どうしでしょう」と言い残し、一人戦場へ赴く青年。さて、戦争と二人の行く末は……。
追記(2019年7月30日)
「野ばら」の記事を追加しました!
通勤や塾、遊びの予定で忙しいんじゃ! という人でも、スキマ時間にサクッと(本当にサクッと)読める物語ですが、心にはグサッと刺さります。
その刺さった衝撃を、心の痛みを、読書感想文に思い切りぶつけてみてください。
【読書感想文おすすめ度】
★★★★★
全学生の読書感想文需要をカバーする最強の一冊(だと思っている)。
童話の舞台やテーマはさまざまなので、書きたいテーマに合わせて選ぶのも素敵!
テッド・チャン|あなたの人生の物語
SF短編集です。
「本なんて読めない! 算数や理科の問題問いてる方がずっと楽しい!」という理系のみなさんにおすすめです。
光の未来予知性らへんの話なんかは、相対性理論にも関係する物理学分野のお話なので、逆に文学的な表現やそういった世界観に浸りたいという人にとっては苦痛になる可能性大です。
表題作「あなたの人生の物語」が実に見事な円環構造をもった作品。深みも抜群で考察好きな人にぜひともおすすめの一冊。
語り出すと長くなりますので、詳細は映画「メッセージ」の記事をご覧ください。
本作を読書感想文の課題図書として据えるのは、ものすごく難易度が高いです。
難易度が高いぶん、うまくまとめ上げることさえできれば読書感想文の完成度もめちゃくちゃ高いものになると断言できるくらい、絶妙なテーマを含んだ小説なのです。
切り口としては「自分の未来が見えたらどうするか?」「この本を読む前の自分の答えと、本を読んだあとの考えはどう変わったか?」あたりがよいのではないかと。
留学の経験があったり、この夏ハワイなど海外へ旅行に行く予定がある場合は、言語が思考に影響を及ぼすというところを切り取って感想文を書くのも面白いかもしれません。
【読書感想文おすすめ度】
★★★☆☆
わたしも読書感想文書きたいくらい(というか書いた)めちゃくちゃおすすめ
だけどハードルが高い……! 小説が難しかったら映画を見てから読んでみて*
まとめ
いかがだったでしょうか。お気に入りの一冊、読書感想文のおとも探しの参考になれば嬉しいです*
読書感想文関連の記事は、夏休み期間中にいくつか更新できたらなあと思います。
短編集多めのラインナップとなりましたので、ちょっとした時間に読めるものが多いかと思います。
いくつかの本を気の向くままに読むのも、一人の作家さんと深く向き合ってみるのもよし。
それでは、よき夏休みを*