コラム

教員という仕事のこと│教師5年目の備忘録

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普段は読書や文具の記事をメインに執筆しているわたしですが、今回はわたしのお仕事である「教師」をテーマに書いてゆこうと思います。

激動の時代、これから先生を目指す皆さんや、あるいは先生という仕事との付き合い方を見直しつつあるみなさんの小さな道しるべとなればうれしいです◎

6000文字オーバーの記事(長くてごめん!!)なので、お暇なときのお供にどうぞ◎

瑛
明るい話題のやりがいはこちら!
先生を目指すすべての人に伝えたい、6つのことこのページを見ているということは、きっとあなたは「先生」を将来の進路のひとつとして捉えているはず。 そんなあなたに、先生になる前に...

 

先生になるまでと、今までのこと

先生を目指した理由は、何かしらの形で「工業教育」に関わりたかったから。

工学系大学院まで進んでいたので、周りはみんな就職or進学。わたしも博士課程に進学し、学業の傍ら先生として働く日々を送っていました。

瑛
博士一本に絞らなかった一番の理由は、学費が高かったから。

本当は子どもたちが好きだからとか、先生っていう仕事に憧れがあったから、とかいうポジティブな理由があればよかったんですが(もちろんそういう気持ちもあったのだけど)、一番は博士に在学するための学費を賄いながら学業を続ける必要があったから

研究室にこもっているばかりで社会の風に吹かれることがほぼなかったため、このままでいいのか……? という疑問があったことも、教員をしながら研究を進めようと決めた理由の一つでもあります。

その後は博士と教員の二足の草鞋を履き、いろいろ思うところがありながらも「とりあえず5年続けたら見方も変わるから!」という先輩のことばを支えに無事5年目の春を迎えることができました。

が、正直なところ……。

瑛
定年まで続ける仕事じゃねえな!!!(断言)

というのが率直な感想です笑。笑、という文字を挟んではいますが、実際のところ全然笑えないくらいに率直な感想です。

 

お昼ごはん食べられないって本当?

はい、本当です。

というか、若手かつ将来管理職を目指している先生ほど「昼飯? 何それおいしいの?」くらいの勢いで頷いてくる、そういう環境です。

一応お昼休みという名の休憩時間はありますが、生徒も昼休みなのでバンバンお呼び出しがかかります。授業が入っていると採点業務資料作成が食い込んでくるので、業務やりながら生徒対応をし、さらに生徒指導案件が入るともう完全に時間が足らなくなります。

お昼ごはんを持って通勤、ということをしなくなりました。
お昼ごはんを食べる時間があるときにはじめて買いに行く、それが教師の現実です。

瑛
しかも職員室内でお昼ごはん、食べづらいんだよね……。

周囲で血相変えて仕事している先生がたくさんいますし、何ならご飯を食べていると「暇そうでいいねえ」「俺もメシ食いたいよ!」と言われます(実話)。

職員室でのお昼休みというのは昼ごはんのためにある時間じゃないような気がします……。

「先生、ごはん食べた?」とは聞かれますがこれはあくまでも挨拶です。「さっき食べましたおいしかったです~」と答えると「俺はまだ食う暇がねえんだよ!」と言われるのでにこやかに「これ片付けたらと思ってるんです~」が正解です。ごはんくれ。

周囲の先生がごはん食べ始めたら食べよ~、なんて思ってると大体昼休みは終わります。ごちそうさまでした(エア昼食)

 

出勤時間と退勤時間について

勤務時間は学校によって少しずつ違うのですが、ほとんどの場合は仕事開始が8時30分前後、仕事終了は5時台に設定されています。

が!!

瑛
もちろん実態はそんなことないよ!!!

勤務時間内に仕事を捌けたら奇跡です。

魔法使いか何かだと思うくらいの業務量なので嫌でも早出もしくは残業することになります。

わたしの場合は以下の通り。

出勤:
朝6時30分前後

退勤:
早いとき:夜7時
通常:夜9時
テスト等繁忙期:それ以降

ここで注意してほしいのは、上記の出退勤時刻は学校に着く時間or学校を出る時間だということ。

家を出る時刻、到着する時刻はもっとえげつないです。

出勤:
朝4時50分始発

※東京都公立校勤務ですが、通勤にはなんと2時間ほどかかります。

東京都の場合、配属校は通勤時間が1時間半以内という条件こそあるものの、これはドアtoドアの時刻なので、教員志望の皆さんはお気をつけて!
特に若いうちは、介護等の特別な理由がない限り通勤時間がかかる遠隔地に回されます。

退勤:
早いとき:夜9時
通常:夜10時
テスト等繁忙期:そもそも帰れないので近場のホテルに泊まる(もちろん自費)

特に入選(入試)のときは、遠隔地からの通勤ということもあって雪や公共交通機関の停止で通勤できなければ終わりなので問答無用でホテルに宿泊します。あと台風のときも帰れないので問答無用で宿泊

書いてて思ったんだけどまともじゃないな
自分の子供や大切な人がこういう勤務してたら迷わず止めるレベルでまともじゃないぞこれ。

瑛
ああ、恐れたまえよ、ローレンス 瑛……。
Bloodborneよりウィレーム先生の名言。教員として勤務してるだけで啓蒙減って獣に近づいてく感じがあるので気を付けますね……。

 

どんな仕事をするの?

授業、生徒指導、クラス担任……といったいわゆる先生のお仕事をしている時間ももちろん多いのですが、実際に先生になってみると生徒と接する時間、生徒と過ごせるお仕事はおまけ(たとえが悪くてごめんなさい……!)なんじゃないかと思ってしまうくらいほかの仕事が多いです。

校務分掌といって、先生の委員会みたいなものが決まっている(たとえば生徒部の先生なら生徒指導や行事担当、総務部なら広報や説明会担当、みたいに)ので、その仕事を進めつつ、合間の時間で授業の準備をしたりテストを作ったり。それから忘れちゃいけない部活動、これは時期によってボディーブローのようにずっしりのしかかってくる業務になることも。

クラスの仕事や授業の合間にほかのお仕事、ではなくて肝心の教育がおまけ的要素になっているなというのが率直な感想です。

瑛
これが一番つらい……。

一番衝撃的だったのが、家庭内暴力に悩む生徒の相談を受けていたら「生徒としゃべる時間があるなら職員室で仕事をしてください」と管理職に告げられたこと。

瑛
事情を話しても聞く耳は持たれず「そういう生徒とはあまり関わらないほうが身のためですよ」と一蹴。

正直言って申し訳ないけれど、自分の子供はこんな学校入れたくない……と思ってしまいました。わたしは可能な限り生徒たちとの時間を積極的に取れたらいいなと思って仕事をしているのですが、先生方によってこのあたりの方針は様々です。

そして最近はコロナ関係の仕事も加わりました。当然、予測できるものではなくて突発的に入ってきます。

具体的には生徒に感染者が出たら2週間遡ってデータを集めたり、濃厚接触者への連絡や自宅学習の資料を整えたり、といった仕事が加わります。

得意なことをアピールするにもそれなりの覚悟が必要

教員になるからといって、勉強だけができればいいわけではありません。

例えば動画編集ができたり、HP作成ができたりといった特技はそのまま学校業務でも役立つわけですが、特技の使い方には本当に注意する必要があります。

というのも、こいつできるぞと思われたが最後、えげつない量の仕事が回ってくる(それはもう本当にすごい量)現場だからです。

わたしは勤務校でポスターデザインやHPの編集を任されているのですが、両面刷り×フルカラーのポスターデザインを完成させるために与えられた猶予は3日間でした。

もちろん、ほかにデザイナーがいるわけではないのですべて一人でこなさなければなりません。とにかく早く! だけどクオリティは抜群に! 一文字の誤字も許さん! というプレッシャーはすさまじく、土日の記憶がほとんどありません……(次のポスター依頼が来るのがこわい)

瑛
もちろん、広報業務やデザイン業務は大好き! なのだけど……

赴任直後で学校のことをまったく知らない人間に任せるならそれなりの情報提供があっても良いような気がしたり、PRの基本方針(誰に向けた資料か? 何を一番PRしたいか? など)くらいは決めてもらわないと厳しいような気がしたりするのですが、とにかく暇がない現場なのでそうも言ってられません。

なんとか納期に間に合ったわたしですが、その直後、管理職からこんな言葉をかけてもらいました。

でもさ先生、最近HPの更新止まってない? 大丈夫? 

瑛
いや確かに3日間デザイン業務にかかりきりだったけども!!

おかげで、達成感が吹き飛んだことを覚えています。「もしかして、わたしの能力、低すぎ……!?」と思ったりもします(この辺は考えすぎちゃだめ。とにかく大きな仕事を片付けたら休息優先! 誰が何と言おうと、これ鉄則です)。

専門性や専門知識にリスペクトがない、というのは学校に限った話ではありませんが、やっぱり学校でも「得意=簡単にできる」という意味だと取られがち。

デザイン得意なんだよね、3日もあったら十分でしょ? え? デザインするだけなのに1週間もかかるの? その間ほかの校務できないくらい忙しいの? 元気出しなよ、好きなことを校務にできて得してるんだからさ!!

というのは日常茶飯事です。

常に喉を乾かした獣と仕事をしているような感覚です。

 

 

わたしBloodborneが大好きなのですが仕事中の世界観ってまさにこんな感じなんですよね……。人間が獣になり、聖職者(≒教職に対して高い志を持っていた人)ほど恐ろしい末路をたどる……悪夢だ……。

 

先生志望の人へ│専門性は評価されない

これは先生を目指す人、しかも工業系の教員を目指している人限定のお話ですが、正直なところ専門が何か、大学で何を研究してきたのかということは全くと言っていいほど考慮されません。

瑛
参考までに、わたしの配属履歴はこんな感じ!

高専での専門:高電圧工学

大学での専門:プラズマ・高電圧工学

大学院での専門:原子力工学

一年目の配属:機械科(もちろん専門知識ゼロ)

異動後の配属:情報技術(こちらももちろん専門外)

配属理由は「人が足りないから」「大学院の知識と経験があればどの分野でも活躍できるから」とのこと。

瑛
……無茶言ってんじゃないよ!!

もちろん生徒に教えなければならないため死ぬ気で勉強しました。

だけどなんだか、虚無なんですよね……面白かった! って感じたこと、自分がかつて魅力を感じたことをまったく教えられず、専門外のことを教えなければならない。

これって、教員にとっても辛いことだし、専門性の低い人からものを教わる生徒にとってもメリットってあんまりないことだと思うのです。

 

おまけ│コロナで見えてきた「学校の姿」

これは書こうかどうしようか迷ったことなのですが、心に留めておくともやもやしてしまいそうなので書くことにしました(宣言)

このコロナ禍が始まって以来、学校でも分散登校や自宅学習が始まりました。

公立校ではこの自宅学習の進みが悪く分散登校と言っても学年別(例えば1学年と2学年が登校、3学年は自宅学習! ←はい3分の2しか学校には来てませんよ!※世の中が求めてるやつとはちょっと違う)だったりするので実際の教室は普通に密というのが現実です。

瑛
こういう現状に危機感を覚えて自宅勤務を選択する先生方もいらっしゃるのですが……。

ここで、ふと気になることが。

教員は密を回避できるけれど、生徒はどうなんだろう?

学校に登校しなければ単位はやらない、あるいはこの程度のことで休んでいて大学進学後の生活やっていけるのかと言われて不安ながら登校している生徒がいる一方で、先生は「自宅で仕事します」っていうのはどうなんだろう……ともやもやしてしまうのです。(本当は生徒も自宅学習できるようにTeamsなりZoomなりを使うべきなんだけど、一教員の意見なんぞ聞き入れられないのが現実(本当にやるせなさすぎる

もちろん、わたし自身も自宅勤務をするのですが、そうなると瑛先生、今日はお休みですかと言われるのももやもやポイント

瑛
自宅勤務ですから!!!!!

なんなら寝ずにデザイン業務やらHP業務やらさられてさせていただいてますから!!!!

一般の企業には七割自宅勤務をお願いしているのに、肝心の公務員が全出社……わたしが一般企業の人だったら「はあ???」ってなるのも頷ける気がします……。

瑛
あとはやっぱり、高校にもなるとオリパラ教育って無理があるなと感じたりします。

大人からすると「オリパラはすごいんだぞ!」と言っておけばいいという感覚なのかもしれませんが、子供だからって甘く見ているとその姿勢まで見透かされるもの。

校内で感染者が出たり、家族はじめ身近な人が感染したりしている中で「オリパラやろうね~!」なんて授業をしても誰の心にも響かない。もちろん、わたし自身もやる意味が見いだせない上に生徒も「え、部活できないのに何言ってるん……?」感が満載。

これが今一番つらいところかもしれません……。

 

もちろんやりがいはある。そして、それを利用する人も。

これは最近になって気づいてしまった、一番気付きたくなかったこと。

あるいは、もうずいぶん前から気が付いていたけれど、気付かないふりをしていたことなのかもしれません。

それは「無償でもこの仕事に携わりたいと思う純粋なやりがい」を、教員、つまりコマを動かすための餌として使う人々がいるということ。

瑛
組織だから仕方のないことなんだけどね……。

先日の校長面接で、通勤はじめ今まで述べた勤務環境が「少し厳しい」と伝えた時のこと。

だけど、やりがい感じてるんでしょ? 生徒、好きなんでしょ?

そう返されたとき、はっとしたことをはっきりと覚えています。

 

まるで死刑宣告のような言葉、というと大げさに聞こえるかもしれませんが、いろいろと限界に近かったわたしの耳には「この程度で辛いなんて、本当はやりがいなんて感じてないんじゃないの?」的なニュアンスを持った言葉に聞こえてしまったのです。

本当に好きな仕事なら、本当にやりがいを感じている仕事なら、もしかしたらこの程度のことは気にならないのかもしれません。

だけど、わたしにとって「やりがい」とは、誰かにやりがいの有無を指摘されて仕事の意欲を燃やすために生まれてくるものではなくて、あくまでも自分の心の奥底からふつふつと湧き上がってくるものなのです。

みなさんに教員のお仕事を紹介しながら実体験としてお話してきたことも積み重なっていたせいで、吹っ切れたどころではなく教員を続けるための最後の柱となっていたものがぽっきり折れてしまったような気がしました。

瑛
すぐに辞めてやる! なんていうのは、生徒のことを思ってもできないのだけどね……。

 

現実と理想は、やっぱり違った

とはいえ、先生という仕事自体にやりがいがあることは事実。
この思いは5年経った今も変わりません。

ただ、当初あふれんばかりだったやりがいゲージは現在ほぼ0です(ごめんなさい)。
先生になるかどうか迷っている人がいたら、全力でほかの進路を考えるようアドバイスすると思います。

Bloodborneよりガスコイン神父。どこもかしこも獣ばかりだ、と言った後、主人公に「貴様もどうせそう(獣に)なるのだろう?」と問いかけてくるのですが、まさにわたしもこんな気分夢を抱いて先生になった人に絶望してほしくない(切実)。我を忘れて激務に身を投じる(=獣になる)ようになったら体か心を壊します……。
瑛
教師のいいところについては少し前に書いた記事にわかりやすくまとめているよ!
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ただ、そのやりがいのために犠牲にしなければならないことがあまりにも大きすぎて、多分このままいくと自我を保ったまま先生をやってる人はいなくなるんじゃないかなと思うくらいすさまじい職務環境がやりがいそのものを食いつぶしているな……と感じることが多くなりました。

本当に熱意をもって、目標をもって教育に関わりたい人ほど「教員」、特に公立校の先生を目指す理由なんてないように思うのです。

教員とはいえ、公立校の先生というのはやっぱり公務員。

お役所色が強く、新しいやり方に否定的、今までのやり方が最善とする風潮がとても強いです。最先端の教育がしたい! とか、柔軟な発想を大切にする先生に出会って救われた! という人ほど絶望する職場です。

瑛
参考までに、わたしがあこがれた先生方のことも記事にしています◎

https://santenreader.com/entry/myteacher-1

現場に来てはっきりとわかったこと、それはこういう素敵な先生ほど早く辞めてゆく(大学教授とか個人塾を立ち上げていたりとか)ということです……(かなしい)。

 

まとめ

たくさん書きましたが、これはあくまでもわたしの個人的な感想です。

わたしは東京都で勤務していますが、都道府県が違えば少し事情は違っている……かもしれません(むしろ切実にそうであってほしい)。

瑛
ああ、現役教員でこんなことを感じている人がいるんだな……程度にお考え下さい!

わたしは書くことが好きで、できることなら子どもに限らずあらゆる人にことばを届けるお仕事に就きたいなと考えているので、もうそろそろ先生というお仕事から離れる……かもしれません。

それが明日なのか、一年後なのか、あるいはもう少し先なのかは分からないけれど、このままではいられないだろうなという気持ち今年になってから輪郭を持ってしまったように思います。

なんだか夢も希望もない内容になってしまいましたが、この記事がどなたかの道しるべ、あるいは今まさに迷っている方の一助となれば幸いです。

それからそれから、これは先生に限らず言えることですが「やばいと思ったら休む」、これ本当に大事!!

瑛
休んでいいのかな……と思ったあなた!

多分それはお仕事しすぎのサインです。
仕事を最優先にしてしまうくらい頑張ってるんですから、たまには自分をねぎらってあげてください。むしろ休む権利を行使することが一番大事な仕事だと思ってください。

進展がありましたら、また記事にできればと思います◎

瑛
できれば明るい話題になりますように……!

それでは!

先生を目指すすべての人に伝えたい、6つのことこのページを見ているということは、きっとあなたは「先生」を将来の進路のひとつとして捉えているはず。 そんなあなたに、先生になる前に...
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https://santenreader.com/entry/myteacher-1

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