今回ご紹介するのは、2018年の5月に発売されたPS4専用ソフト「Detroit: Become Human(デトロイト:ビカムヒューマン)」。
デトロイトというのでアメリカのゲームかと思ってしまいますが、フランスのゲーム会社クアンティック・ドリームによるアクション・アドベンチャーゲームです。
アンドロイドが一般的になり、人の暮らしのお手伝いをするようになった社会で物語は進行する物語を左右するのは、プレイヤー自身の選択。
とてつもないスケールの世界観の先に見える「未来の姿」に深く考えさせられる、まさに映画級の傑作です!
Contents
Detroit: Become Humanとは?
舞台は2038年のデトロイト。
AI(人工知能)やロボット工学が発展し、驚異的な知性と人間とほぼ見分けのつかない外見を併せ持ったアンドロイドが製造されるようになった世界で、人とアンドロイドの物語が繰り広げられます。
Become Human とあるところから、なんとなくアンドロイドが感情というものに目覚めて人間になるんだろうなあ……と思っていたけれど、スケールと物語の中で提起される課題や問題の深さに圧倒されました。
小説が発売されたら迷わずレジに持っていくレベル。このストーリー、一生忘れることはないと思います。
近未来の物語となっているけれど、これが現実になる日はそう遠くないと感じる濃い内容でした。
では早速、Detroit: Become Humanの魅力に触れてゆきましょう!
※ネタバレはギリギリなしです。安心してね!
参考|PlayStation Blogに寄せられた感想
#Detroitわたしの物語 として募集された感想がまさにすぎるのでご紹介。
買ってよかった! と思わせてくれる作品であること間違いなし。アクション・アドベンチャーだけど、アクション苦手な人でも難なく楽しめるので全人類におすすめしたいゲームです。
キーワードは「選択」
Detroit: Become Humanの特徴はなんと言っても選択肢の豊富さ。それも、ただたくさんの分岐があるというだけではなくて、リアルに制限時間が設けられていたり、その後の展開がまったく異なるものになるというところ。
この一貫したリアリティが、これはゲームではなく「あなたの物語」なのだという実感をじわじわと突きつけてきます。
「オープンシナリオ・アドベンチャー」と名付けられたプレーヤーの行動で大きく変化するシナリオは、プレイヤーに対して感動とともに大きな問いを投げかけてきます。
暴走したアンドロイドに娘を人質に取られた母親が、交渉人として現場に到着したアンドロイドのコナー(=娘を助けに来てくれたアンドロイド)に向けて放った一言がこれ。
ちなみに、これの1つ前のセリフは「それをあの子に近づけないで!」
「対話」か「戦い」か
たいていの人は「対話」を選ぶと思いますが、このゲームではこちらが対話を選んだからと言って相手が聞き入れてくれるとは限らないというリアリティが付与されています。
あらゆる選択が未来につながっていて、たとえば必要な情報を集めていないくせに「きみのことはよく分かるよ!」と言っても聞き入れてもらえなかったり、必要物資を手に入れていないせいで助けることができなかったりということが普通に起こります。
キャラクターごとの視点の違い
コナー
作中においては最新鋭のRK800型……なのですが、プレイヤーが選ぶ選択肢によってはとんでもなくへっぽこなアンドロイドになるのでプレイヤー間ではへっぽコナーと呼ばれることもあるアンドロイド。
捜査権限が与えられた初のアンドロイドでめちゃくちゃ優秀なぶん、徐々に芽生えてくる人間性がいちばん強く現れてくる主人公だと感じます。
アンドロイドを心の底から道具としか思っていない人間と、アンドロイドに対して心からの理解を示してくれる人間が出てくるのもポイントです。
口腔内(?)にブルーブラッド(アンドロイドのボディにエネルギーと電子情報を循環させる青い液状の物質のこと。人間で言う血液みたいなもの)解析装置がついていて、アンドロイドの諸情報特定するためにあちこちでブルーブラッドを解析して回るのですが、初見時はなかなかに破壊力の高い行動なのでびっくりすること間違いなしです。
アンドロイドが知り得ない情報を目の当たりにしても冷静に切り込んでゆく姿勢はさすがと言うべき分析力。
他の型のアンドロイドだったら自己破壊(アンドロイドが自らを破壊する行為)しているかも、といえるような過酷な状況でも飄々としているかっこよさと、全力で応援したくなるかわいさを併せ持った絶妙な主人公だと思います。
『デトロイト コナー』で検索すると予測変換に『デトロイト コナー かわいい』の文字が。
愛されてるなあ……!(うれしい)
マーカス
聡明で心優しき人間の画家:カール・マンフレッドの介護をしていたアンドロイド。カールと息子であるレオの口論に巻き込まれ、レオから暴力を受けたことがきっかけで変異体に。
マーカスの物語は徹底的にアンドロイドの目線を味わうことができる世界観になっていて、あらゆるストーリーを通して「アンドロイドが味わう感情」をダイレクトに感じることができるのが特徴。
文章やセリフで明言されることはなくても、人々の行動や反応から壁や本音が透けて見えるようになるのが辛い。だけどそこに魅力があるのもまた事実。
多数のアンドロイドを先導して蜂起することができるマーカスの選択によって、世論が大きく動くのも注目ポイントです。
なによりもすごいのが、自分の選択が招いた未来が、周囲にいる仲間や他のアンドロイドにまで及ぶというところ。選択ミスで主人公だけが不幸になるゲームは数あれど、ここまでリアルに「選択の結果」を反映したゲームは他にありません。
カーラ
カーラは、作中で最も弱い立場にあるアンドロイド。
彼女のストーリーで描かれるのは不条理と理不尽。感動の大きさもピカイチだけどストーリーを進めるのがつらくなることもあるくらい、心に迫ってくる内容です。
特にアンドロイドに対してひどい仕打ちをする人間の姿は、心が痛くなるくらいの現実味を帯びて迫ってきます。いくつかに分岐するエンディングも、ものによっては心をえぐられるストーリーです。
1周目は見事にやられました。
マーカスなにしてくれるんだと思ったところで、マーカスの選択はすなわち過去の自分の選択だと気づいて頭を抱えたのはいい思い出。
別の立場を体験するからこそ、再びマーカスのストーリーをプレイしたときには1つ1つの選択がより重く両肩にのしかかってくるようになるのもすごい。
ただし、室内の装飾品やちょっとした雑誌などから「人間側にもそれなりの理由がある」ことが示唆される深みは一級品。
ストーリーを追うことが主となる1周目は切なさが印象に残りますが、2周目以降は不条理と理不尽の世界が一転、家族と愛の形を問う物語へと姿を変えるのも見どころの一つです。
感想|アンドロイドより人間のほうが……
ゲームを通して強く感じたのは、本来感情を持たないはずのアンドロイドのほうが人間らしく、感情を有しているはずの人間のほうが感情に乏しくなっているということでした。
機械だから、壊れたら修理すればいい。代わりはいくらでもあるし、古くなったら最新機種を買えばいい。
自分たちの思い通りに動いている間は「便利」という言葉を「頼もしい隣人」というオブラートで包んで表現しているけれど、いざ相手が自我を持ち始めたらしいと知ると「不便」「危険」という言葉をダイレクトに押し付けてくる人間の姿を通して、「アンドロイドは是か非か?」ということではなく「人間とは何か?」ということについて深く考えたいと思うようになりました。
以前紹介した映画「メッセージ」と合わせて楽しみながら、近未来に思いを馳せるのも素敵です。
気になった方は、ぜひご自身の目でアンドロイドと人間の行方を確かめてみてくださいね!
それでは*