わたしのお気に入りを100冊見つける、ゆったりのんびりな企画。読了記事を書いているものは、該当ページのリンクも合わせて載せています。
ベストブックの基準は「何度も読み返したい、誰かにおすすめしたい一冊かどうか?」という質問に迷わずYESと答えられること。
Contents
My Best Books100
1|川上弘美「センセイの鞄」
かつての先生と、教え子だった「わたし」の恋愛を描いた小説です。年の差というところで人を選ぶかもしれませんが、とにかく言葉が美しい。心のなかに情景を直接描き出してくれるような日本語が堪能できます。
それからご飯が美味しそう。川上弘美さんが書く食事風景はシズル感満載!
緩やかに、しかし確かに進む2人の時間。何気ない日常がクライマックスで一気に輝く感覚がたまりません。
2|ジョゼフ・ディレイニー「魔使いの弟子」
ハリポタシリーズがお好きなら絶対読んで欲しいシリーズ。
特に「ラノベ特有のギラギラした魔法は嫌いだけど、落ち着いてちょっと現実味のある魔法ものが読みたい」という読者さんには激推しの一冊。
魔法使いではなく「魔使い」であり、魔法の勉強もペンとノートを駆使してひたすらメモという土臭さがすごい。主人公のトムが絶妙なトラブルメーカーなので、常にワクワクできるのも◎
また、師匠であるグレゴリーさんも寡黙で決して魔法をひけらかすことがないため、重厚感あふれるファンタジー世界を楽しむことができます。
そのせいか敵もリアリティ満載でめちゃくちゃ心に来ます。単にでかくて炎を吐くだけのドラゴンが可愛く見えるレベルの強敵ばかり出てきますよ!
3|池澤夏樹「スティル・ライフ」
この世界がきみのために存在すると思ってはいけない。世界はきみを入れる容器ではない。
世界ときみは、二本の木が並んで立つように、どちらも寄りかかることなく、それぞれまっすぐに立っている。
きみは自分のそばに世界という立派な木があることを知っている。それを喜んでいる。世界の方はあまりきみのことを考えていないかもしれない。
書き出しがもうとにかくツボ。雰囲気と世界観の透明度が抜群の一冊。
夏の暑い日、ひっそりとした美術館で静かに作品を眺めているような気分で読み進めることができます。
かなり純文学みの強いストーリーではありますが、仕事や勉強ばかりの日々で心が乾いてきたなと感じている人や、純粋に言葉の森に迷い込んでとことん言葉の意味を吟味する読書時間が味わいたい人にピッタリの一冊です。
4|梨木香歩「西の魔女が死んだ」
高校生の自分におすすめしたいと本気で思った一冊。人間関係に疲れて自分を見失いそうなときの特効薬です。
まいのすべてを優しく受け止めてくれる西の魔女との日々が「終わってしまう」ことはタイトルからも明らかですが、不思議なことに読後に残るのは喪失感ではありません。
友達とのあり方に悩む学生の皆さん、子供の頃の夢を捨てかけている大人の皆さんに、そっと手にとっていただきたい一冊です。
5|梨木香歩「不思議な羅針盤」
… Coming Soon !!
6|上橋菜穂子「精霊の守り人」
小学生のころ「ファンタジー」というジャンルを知るきっかけになった一冊です。
普通、魔法ものや異世界ものというと少年少女が主人公であることが多いのですが、守り人シリーズの主人公:バルサは30越えの立派な大人。その分、行動や言動に重みがあります。
短槍を使いこなすめちゃくちゃにかっこいい女性なのですが、しっかりとした一面ばかりではなく悩みや怒りといった感情も顕にする人間らしさも溢れているところが◎
著者の上橋菜穂子さんは文化人類学者ということもあり、物語の舞台や人々の暮らし、風習や言い伝えなどもめちゃくちゃ凝っています。世界のどこかに、こういう街って本当にありそう……! と思える冒険ができますよ◎
7|東直子「薬屋のタバサ」
こちらは川上弘美「センセイの鞄」によく似た雰囲気の小説ですが、舞台そのものが「現実にはないどこか」といった印象なのでより空想活動がはかどります。
謎に包まれた薬屋のタバサはじめ、主人公も大切な「何か」を失っています。そんな中でゆっくりと進むストーリーを追うごとに、最初は好奇心だったものが小さな恐怖を生み、その怖さはやがて「主人公が抱える不安や欠落、もしかして自分の中にも同じものがあるのではないか?」という感覚を連れてくる不思議な作品。
お風呂での会話など、鮮烈に光って印象に深く残るシーンが多いです。
決してホラーではないけれど千と千尋の神隠しの世界をたった一人で旅している、そんな気持ちになる一冊です◎
8|谷川俊太郎「二十億光年の孤独」
星空の下でじっと向き合いたくなる一冊。
隅々までが美しい言葉でつづられる詩でありながら、他の作家さんとは異なりどこか親しげな雰囲気を帯びているのも谷川さんの特徴。
ちょっと一人になりたいとき、動きすぎて疲れてしまったときにおすすめのサプリ的な一冊です。
9|長田弘「世界はうつくしいと」
美しい描写のなかに鋭さを秘めた詩。
それが長田弘さんの特徴です。谷川俊太郎さんの詩から甘さを取り除いたような、すんとした後味の世界が楽しめます。
読書や空想は現実を忘れるためのものであることも少なくありませんが、長田さんの世界は現実を正しく思い出させてくれる、そんな言葉で溢れています。
10|灰谷健次郎「兎の眼」
教員になってから出会った、小学校を舞台にしたお話。
先生になりたいと思ってる人、先生一年生のみなさんに全力でごり押ししたい作品。小谷先生のひたむきさ、新任ならではの真っ直ぐな熱意と悩み、それから足立先生の熱血っぷりがたまりません。それから、学校で起こる数々の事件がとってもリアルです。
読み進めるうちに、自分の中にある「偏見」や「思い込み」が顕になってひやりとします。言葉ではどんなふうにも取り繕えるって怖いなと思うと同時に、処理場のハエ博士:鉄三の個性をゆるやかに受け入れてゆく中で変わってゆく小谷先生の姿や考え方にはっとさせられる一冊です。
11|遠藤周作「海と毒薬」
さわやかな読後感をお求めの方にはお勧めできないけれど、戦争と罪について深く考えさせられる一冊。戦時中、あらゆる「普通」が普通ではなくなる状況下において、同じ立場になったときに自分は果たして「正しい判断」を下すことができるだろうか。
自問しながら読み返すと、見えてくる世界が変わるはず。
完全な悪が存在するとするならば、ベタかもしれないけれどそれは「戦争」なんだろうなと思う反面、人の中に眠っている「悪」もまた些細なきっかけでここまで大きく膨れ上がってしまうのかと感じます。
12|小川洋子「ブラフマンの埋葬」
13|笹井宏之「えーえんとくちから」
14|レイ・ブラッドベリ「華氏451度」
2021年上半期のベストブック。
本を持つことも読むことも罪とされる世界で、本を燃やすことを生業として生きる昇火士:モンターグが主人公。
「本好き」を自覚しているからこそ刺さる「本とは何か?」という言葉の数々に圧倒されると同時に、本との向き合い方や自分の頭で考えることの大切さを改めて考えさせられる一冊です。
15|ドミニク・チェン「未来をつくる言葉」
理工学、とくに情報工学に踏み込んだエッセイ。工学系の方に特におすすめの一冊ですが、文体が柔らかいのでどんな人でも読めちゃう魅力があります。
エッセイというよりも美術館でいろいろな展示を眺めているような気分になれるというのがこの本の魅力。コミュニケーションとは何かを改めて考え直すきっかけになると同時に、これからの技術発展、文明が向かう先についても思いを馳せることができるはず。
入試問題にも取り上げられているエッセイなので、受験時の評論対策としてもおすすめです。
16|村上春樹「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」
村上春樹さんの作品の中で一番のお気に入りは? と尋ねられたら、真っ先に浮かぶのがこれ。
ファンタジーでありながらも現実的でハードボイルド。「果てしない物語」や「ネシャン・サーガ」のように、異なる世界の異なる主人公の物語(※これはちょっと所説あるかもなのですが)が交互に展開されます。
性描写も控えめ(というかほぼほぼない)ので、生々しい表現が苦手で村上春樹作品を敬遠してるという方もぜひ。
17|村上春樹「海辺のカフカ」
これは二番目に好きな村上作品。上記で紹介した「世界の終わり(略)」よりも性描写はなまなましめ(というか本作の場合は相手が問題になるかもしれない)なので、苦手意識のある人は若干の注意が必要です。
図書館・猫・ファンタジーというキーワードが刺さる人は読んで間違いないと思います。猫好きにしかできない猫好きが発狂する描写もあるので、こちらもちょっと心の準備が必要かも。それも含めて、描写力&表現力がさすがすぎる村上春樹さん……!