人生、と言ってもまだまだ全然短い人生しか歩んでいないけれど、振り返ってみると「この本と出会ってなかったら今の私いないな……?」って本が何冊かあるんです。
人生のターニングポイントとなったストーリーなんかも織り交ぜながら、私の2019年現在の「きっかけ本」を10冊まとめてみました!
Contents
精霊の守り人|上橋菜穂子
小学校4年生のとき、「私が好きな魔法やら騎士やらが出てくる話のジャンルは”ファンタジー”というらしい」と言うことを知ったころに出会った本。
小学生におすすめのファンタジー本というと、どうしても「普通」の少年少女が魔法の世界で成長していく……というストーリーが多いもの。
「そうじゃなくて! そういうファンタジーじゃなくて、もっと旅のプロみたいな人が本物の試練に挑むような話が読みたいの!」というおませな願いにがっつり答えてくれた一冊。経験豊富、ベテラン用心棒の主人公バルサに憧れ、生ぬるさ一切なしの戦闘シーンにはらはらしながら一気に読んだのはいい思い出。
感動しすぎて家族におすすめしまくりました。結果、母も守り人シリーズの大ファンに。
都会のトム&ソーヤ|はやみねかおる
神の味噌汁と言えばこれ。
おばあちゃん譲りのサバイバル王(本人曰くどこにでもいる平凡な中学2年生)・内藤内人と超秀才の御曹司・竜王創也タッグが『究極のゲーム』を作るために奔走するお話。
中学生の頃の夢:ゲームクリエイターの輪郭を固めた小説です。
創也の知識量が半端じゃないのに嫌味なく挿入されてくる感じがたまらない。内人の素直で穏やかな語り口調の影響も大きいのかな?(それから、読者の思いやツッコミをめちゃくちゃ的確に代弁してくれる内人、好き)
頭も心もぐっと成長できる一冊。学校では教えてくれない、「生きた生きる知恵」が詰まった物語です。
春に|谷川俊太郎
この気持ちはなんだろう。
本ではなく詩、合唱曲ですが、合唱祭で先輩が歌っているのを聞いて「あ、いい曲」と思ったのが最初の出会い。
誌が紙を飛び出して歌になっている感動に突き動かされて、谷川俊太郎さんの詩集を買いあさり、寝るのも忘れて読みふけったのはいい思い出。二十億光年の孤独、62のソネット、今も大好きなたくさんの詩と出会いました。
詩を読もうと思ったきっかけは、後に短歌への扉を開いてくれました。
薔薇のマリア|十文字青
法も秩序もない国が舞台のライトノベル。
美貌の侵入者(※男)・マリアローズはめちゃくちゃ弱い。主人公なのに信じられないくらい弱くて、一人じゃ何もできないと分かっているのに、魔物がうようよいる迷宮にひとりぼっちで挑んでゆく。
その姿が勇ましい……のではなく、この物語の見どころは「マリアローズに仲間ができる」過程と、マリアローズの心境の変化。自分で自分が嫌になったマリアローズが大失敗を喫し、自暴自棄になって逃げ出しても、仲間はマリアローズを捕まえに来る。どっちも不器用なんだけど、そこにはなんだかあったかいものがある。
それと同時に、「そんな仲間現実にはいないでしょ」じゃなくて「こういう仲間がいてほしいと思ってるんだ」という本音に気付かせてくれた一冊。
この本と出会ったおかげで、人との付き合い方、仲間の作り方が劇的に変わりました。
センセイの鞄|川上弘美
デズニーランド。
大学院時代、編入当初から絶対履修するんだと心に決めていた現代文の講義で提示された課題図書。
現代文学ってなんとなく苦手……と敬遠していた自分を張り倒したくなりました。
癖のない読みやすい文章に正直な言葉、丁寧に日々を積み重ねてゆくツキコさんとセンセイの恋。四季の移り変わり、二人の関係がゆっくりと進展してゆくさまが心に染みました。
文学っていうと難しそうな気がするけれど、肩肘張らずに、好きなものを心ゆくまで素直に楽しんでいいんだ……! と開眼。
それから、川上弘美さんの小説はどれもごはんがめちゃくちゃ美味しそうなんです。インスタ映えしそうな派手なごはんじゃなく、肉じゃがとかそうめんとか、身近な食事が凄まじいシズル感を纏って登場します。
ブラフマンの埋葬|小川洋子
「センセイの鞄」に衝撃を受け、こういう小説もっと読んでみたい……! ということで『川上弘美 似てる 作風』で検索した結果、最初にヒットしたのが小川洋子さん。
「創作者の家」「碑文彫刻師」「雑貨屋の娘」など、場所や登場人物が名前からしてすでに魅力的。小川洋子さんのファンになるきっかけになりました。「ブラフマン」と名付けられた謎の生き物とのひと夏の思い出、タイトルから終わりが想像できるだけに心に刺さるんです……クライマックスで、ちょっとだけ主人公の「僕」を恨んだのは秘密。
えーえんとくちから|笹井宏之
Twitterで流れてきた短歌がきっかけで出会った本。
それまで短歌というと俵万智さんか古今和歌集、百人一首くらいしか知らなかったのですが、笹井さんの短歌はいい意味で強烈に私の短歌に対するイメージを変えてくれました。
何がすごいかって、まず第一に透明感。世界が透けて見えるんじゃないかと不安になるくらい。どこからこんな繊細な言葉がやってくるんだろう。
次に、不意を突く鋭い視点。
たとえば、こんな具合に。
廃品になってはじめて本当の空を映せるのだね、テレビは
世界はうつくしいと|長田弘
うつくしいものの話をしよう。
これは雑誌の特集で、モデルさんが「いつも本を鞄に入れて持ち歩いています」と紹介していた詩集。
紙面には置き画の状態でこの本が写っていたわけですが、タイトルに惹かれて手にとって衝撃を受けました。
とどまることなく流れ続ける言葉たち。雪みたいにはらはら降り積もる言葉を眺めていたら、突然その言葉が心の中にまで降ってくる。
気がついたら、詩の中にいた。帰ってきたら、世界がちょっと広がっていた。
生きる姿勢と、日々の受け止め方を変えた一冊です。
西の魔女が死んだ|梨木香歩
これは大学生のときに出会って、読書人生において初めて後悔した本。
……高校生のときに出会いたかった!!
主人公のまいは中学生なのだけど、彼女が抱いていた「生きづらさ」や周りに馴染めないといった悩みは、私自身が高専時代に抱えていた悩みそのものでした。
どうしても学校へ足が向かないまいは、ひと夏の間、西の魔女こと「ママのママ」、つまり祖母の家で暮らすことに。そこで始まる魔女修行の要は、「自分で決めること」。
悩み、迷い、ときに感情のままに行動するありのままのまいを柔らかく受け止め、「I know」とつぶやく西の魔女の姿が本当に大好き。
私のTwitterハンドルネーム、実はこのセリフから生まれたものです。
追記
「西の魔女が死んだ」の記事を追加しました。詳しい内容・見どころなどが気になる方は参考にしてみてください!
https://santenreader.com/entry/nishinomajo
兎の眼|灰谷健次郎
小学校の図書館にもあった本です。当時小学生の私は「ああ……ハエの話ね……」と思って早々に読むのをやめてしまった本。
もったいない!!
教師になってから改めて読み直して魅力に気づいた一冊でした。先生になりたいと思ってる人、先生一年生のみなさんに全力でごり押ししたい作品。小谷先生のひたむきさ、新任ならではの真っ直ぐな熱意と悩み、それから足立先生の熱血っぷりがたまらない……!
処理場のハエ博士:鉄三に手を焼く新任教諭:小谷先生が主人公。石のように押し黙ったまま口を開こうとしない鉄三に振り回される小谷先生ですが、ある日教員ヤクザの異名を持つ足立先生に「鉄三のタカラモノを見落としてる」と指摘されます。
読み進めるうちに、自分の中にある「偏見」や「思い込み」が顕になってひやりとします。言葉ではどんなふうにも取り繕えるって怖い。「私は大丈夫」って思ってしまうと、自分の思い込みに気付けなくなるのが一番怖い。
兎の眼を読んでいなかったら、子どもたちに対して偏見や思い込みを抱えたまま教壇に立っていたのかも……。
職員室の中の様子もリアルで、思わず唸ってしまいました。たぶん、他の先生たちにも鉄三や足立先生と同じように、それぞれの過去があるんだろうな……。
まとめ
こうして見ると、人生のターニングポイントに運命の(本との)出会いあり! と感じます。本に育てられてるなあ……もうほんと、本との出会いに感謝の気持ちでいっぱいです!
今回はざっくりとした紹介にとどまりましたが、今後一冊ずつ、時間をかけて紹介できればと思っています。このページもゆっくり成長させていかなければ……!
ひとまずの10選は、こんな感じ。
心に留まるものがありましたら、みなさまもぜひ読んでみてください!